金木犀と風と満月と

昨日の帰り道の坂道,もう日付も変わろうかという頃.良い香りを放つ金木犀の花びらが強い風に舞っている.記憶ではもっと早く,残暑が残る季節に咲くその花.その甘い香りも強い風と感じる肌寒さで疲れた身体を癒やすには能わない.

近所の公園が木々が揺れる音で響いている.ふと振り向いて空を見る.満月だ.昨日出かけた際に満月だと思っていたが,明らかにそれは違っていたとわかる.満月の光というのはそれ以外のどの月よりも輝き照らす.どんどんと流れる薄い雲に遮られるものの隠れることはない.

木々の響きと風と満月が身体に染みこんでくる.

甘い花より,強く吹き付ける風と蒼い夜空と輝く満月とで安らぎを与えてくれる.僕は金木犀を啄む鳥ではなく,荒野を歩く狼になりたい.北の大地を感じる獣になりたい.