阪神競馬場、そして宝塚記念

1999年7月11日。結局、朝の仕事中に判断を下し西に向かうことにした。宿泊場所を確保し、出発。途中で買おうと思っていた競馬ブックは駅売りが無いとは知らなかった。神様の予想の載るニッカンを買うことになる。ついでに筆記用具を一つも用意していなかったことにも気付く。やれやれ。新幹線に乗って新大阪まで。おっとその前に立ち食いきしめんを食べる。

いまいち行き方が解っていなかったので確実に分かる方法で行くことにする。大阪まで出て阪急に乗り換える。ちょうど直行の臨時列車があるようなのでそれに乗る。そして仁川の駅に到着。今まで行ったギャンブル関係の施設のある駅前に比べると店が少ない。だがここも例に漏れず人の流れについていけば自然に目的地に着く。サンライトウォークという屋根付きの通路を抜けるとそこが入場門である。入場券を買い中に入る。ワゴンに山積みになったレーシングプログラムを1部手にして道なりに移動する。

するとそこにはパドックがあった。屋根付きのパドック。TV中継では見ていたが実際に見ると大きさに驚く。中京競馬場パドックとは大違いだ。入場門は2階にあるので階段を降りたところでパドックと同じ高さで見ることができ、その周りはテラスになっていて上から馬を見ることもできる。もう既に1Rのパドックは始まっていた。ほかに目的があったのでそこを横目にセントウルガーデンとスカイパークの間にあるプレゼントの会場に向かう。ストラップを見せて宝塚記念CDを貰う。去年の宝塚記念の実況と新しい宝塚記念のファンファーレの入ったCDだ。

これさえ貰えば11Rの宝塚記念までは実に暇なので記念馬券だけ買ってぶらぶらとすることにした。ちなみに買った記念馬券は宝塚記念スペシャルウィーク単勝グラスワンダー単勝、その2頭の馬連、とヒコーキグモの単勝(笑)。あと7Rにマチブセも出ていたので単勝だけ買っておいた。

とにかく広い。中京と比べるだけ野暮かもしれないがそれでもはじめてのローカルじゃない競馬場は大きく見えた。まあ、特に代わり映えするわけじゃないんだけどね。ふと通った1Fのメディアストリートではサイレンススズカのメモリアル展示をやっていた。でも入らなければよかったな、とも思った。久しぶりに思い出して泣いてしまった。ちょっと恥ずかしい。でも、改めてサイレンススズカの凄さが解ってよかったのかもしれない。彼は僕を実に感傷的にさせる。そして昼休みの杉本清の話を聞いて嬉しかった。今年の夢はサイレンススズカだそうだ。僕もそれしかないと思った。まさに夢だ。

そして時がやってきた。いよいよ僕の初めてのG1観戦だ。パドックではグラスワンダーが非常によく見せていた。目の下が黒くなっていたがそれ以上に馬体の充実ぶりに目を見張った。夏負けなど微塵も感じさせない。体重増すらある。そして本馬場入場。武スペシャルウィークはいつものように観客へその姿を目に焼き付けさせるようにスタンドの前をゆっくりと歩く。グラスワンダーはレースと同じようにぐるっと向こうを周った。そして僕の目の前あたりの残り3ハロンほどの地点で立ち止まった。ゆったりとあたりを見渡すように靜かにその場所にしばらく居た。ここに何があるのだろう?

やがてレースが始まった。4角で早めに先頭に立つスペシャルウィーク。そしてグラスワンダーが差す。そう、この地点だったのだ。彼の見ていたのは。そのまま一気に馬体をあわせるまもなく抜き去った。彼は再びグランプリホースになった。この2頭の次元の違う戦い。まさに最強世代。ちなみにステイゴールドはその2頭の次、3着。いつもの位置だね。

きっとこのレースも後々まで語り継がれるだろう。このレースを見に行って本当に良かったと思った。