優駿牝馬

第4コーナーをまわって直線に入り、トゥザヴィクトリーが先頭に立つ。その鞍上には世界に名だたるジョッキー武豊。そして名手岡部の乗る3歳牝馬チャンピオンスティンガーが追い出す。桜花賞馬のプリモディーネもそのあいだから馬込みを捌き突っ込んでくる。だが一番外からすごい足で伸びてくる。そしてきっちり測ったように首差でゴール板を走り抜ける。TV中継で解説している人たちは唖然としていた。たぶん『まさか』という気持ちが強かったのだろう。善戦はするがとても勝てるとは思っていなかったのだろう。ゴールした後も鞍上の蛯名すら勝利を確信していたとは言い難かった。そしてやがてスタンドから歓声が沸き上がる。地下馬道に消える蛯名がこぶしを挙げる。第60回の優駿牝馬オークスで4歳女王ウメノファイバーが誕生した。

7番人気。決して前評判は高くない。実際僕も距離適性があるであろう2000メートルに比べて距離は長いように思えたし、本格化は秋だと思っていた。それだけにうれしい勝利だった。秋は秋華賞2000メートル、エリザベス女王杯2200メートルとウメノファイバーにはより距離適性のあるレースだ。きっと活躍してくれることだろう。まあ、個人的にはもう引退してもいいんだけどね(笑)。ただ、無事に走ってくれればいい。そして彼女の子供が走る姿を見たい。これで競馬を見る楽しみがはるか長く伸びた。

サイレンススズカに続き僕に競馬の楽しみを教えてくれた彼女。そんな彼女に感謝したい。でも、ひとつ謝りたい「これから先G1勝てないと思う」なんて書いて悪かった。僕の好きになった馬は本当に強い馬だった。