競馬センチメンタリスト

多分誰かが云うだろう。よくあることでいちいち気にすることなんてできない、と。
そのとき熱心に見ていたわけではないけれど、いま映像で見て感傷に浸る。長い競馬の歴史を考えれば僕が生まれたときから見ていたとしても、たいした長さではない。過去を知って語ることも許されるのでは、そう思う。
 ドバイの地で散った砂の女ホクトベガ
 馬を熱心に見始めて何度か見たレース中の事故。その映像を見ればほぼ馬の行く先がわかるようになった。そしてTV番組で見た砂に崩れ落ちる馬体、投げ出される騎手。その上を馬が通り過ぎる。あの馬は助からない、どころか鞍上の横山典はよく無事だったなと思う。涙が溢れる。
地方交流の重賞で勝ち続け過酷な戦線をくぐり抜けてきた、まさに身を削り。彼女は強かった。あらゆる地方の競馬のファンにその強さを見せ付ける。世界にも見せ付けるはずだった。彼女の名前の残るレースがドバイにできるそうだ。いつか日本の馬がそのレースで勝って欲しいと思う。
そして今年の皐月賞。奇しくも同じ星の名を背負い、3冠を競ったベガの仔がクラシックを走る。あの星の名は受け継がれるのだろうか。

あの走る姿を魂に刻み込め
そして僕は感傷的に競馬を見る