笠松競馬場

風邪をひいているというのに師匠と駅で待ち合わせた。架線事故とやらで電車が止まっている。時間が過ぎても来ないな、と思ってたら娘さんと一緒に動き始めた電車から降りてきた。明日の遠足の下見に行ってたらしい。さっきの電車の止まった余波で電車がなかなか来ない。また駅で待つことになる。

金山で名鉄に乗り換えて笠松の駅まで行く。駅から降りて地下道をくぐる。堤防の階段を登るとそこに笠松競馬場がある。木曽川の岸にあるここは馬場の内側に畑まであるのどかな競馬場だ。場内には小さな食べ物屋がたくさん並んでいる。その前で串カツや焼き鳥やおでんやヤキソバなども売っている。なんだかとても“らしくて”いい雰囲気だ。

笠松競馬場は右回りダートの1100メートルで、パドックがコースの内側に用意されている。実際に走るコースの向こうにパドックがあるのだ。ここで面白いのは馬は堤防の向こうの厩舎から堤防を登り上の道路を越えて競馬場にやってくる。道路は完全に馬優先である。堤防の道路を車で走っていると馬の通行のため止められることになる。でもここではいつもの風景だ。馬は引かれてパドックまでやってくるが騎手はマイクロバスに乗ってやってくる。騎乗の前にスタンドのファンの方に向けて頭を下げてから馬に乗る。乗ったままいちどコースに入りファンにその姿を見せるようにしてそこを歩きもう一度パドックに戻る。そして順番に直接馬場に入場するのだ。とてもファンと馬や騎手との間が近い良い競馬場ではないかと思う。

ここで有名なのはやはり安藤勝巳であろう。中央の競馬にも多数乗っている。僕は個人的にこの騎手は武豊よりうまいのではないかと思う。結局タラレバは意味の無いことだが中央でまともに馬に乗れたのなら武豊の勝ち星を上回るだろうと思う。しかし現実は地方の馬にその騎手が乗って中央で走る日にしか地方の騎手は乗れない。外国人騎手に用意されている短期免許すらない。当然調教師や馬主も実際に乗れるか分からない騎手に良い馬を乗ってもらうことはなかなかし難いだろう。しかし彼は今年すでに中央で12勝を上げている。極端に制限された騎乗の中で関西でならリーディングで12位に当たる成績、全国でも22位に当たる。まだ壁は厚い。だがいつかクラシックで彼が勝つことを夢見たい。

そして更に有名なのは「オグリキャップ」であろう。彼はこの笠松から出てきた名馬だ。笠松競馬場を入ってすぐ右手には彼の銅像がある。その彼を記念して行われているのが今日行われる交流G2競争「オグリキャップ記念」である。現在交流競争では最長のダート2500メートル。

そして今年は中央のナリタホマレキョウトシチーを、1400メートルを驚異のレコードので勝った快速馬トミケンライデン、名古屋の期待馬ゴールドプルーフが迎え撃つと云う感じだった。

実際パドックでは武豊の乗るナリタホマレが良い馬体だった。そしてもう1頭師匠と意見の一致した馬がいた。1番外から出走のタカノハハローだった。実際レースがはじまって飛び出したのは予想されていたトミケンライデンではなくタカノハハローである。ゲートから出た瞬間外によれた幹事だったが出鞭を使って前に出る。1番内側で逃げの体勢に入ろうとしていたトミケンライデンにかぶせるような形で前に出た中央なら斜行で審議になっていたかもしれないぐらいの出方であったが地方なら当たり前なのかもしれない。結果その前に出れたのが幸いしてうまくペースを作り、最後にはナリタホマレに抜かれたものの2着に残る。

そして表彰と武豊へのインタビュー。「天皇賞も応援してください」といった。

師匠はしっかり儲けたようで本当はここまでで帰る予定を引き伸ばして最終レースを見ることにした。締め切られて返し馬も終わったのだがレースがはじまらない。そこで場内アナウンス「場外での集計作業に手間取っております……、もう少しお待ちください」。もう既に30分待っているのにである。結局発走は1時間も遅れたがもう馬券も買ってあって、次にいつ来るかも分からないのでレースを見ないわけにもいかない。寒い中スタンドに座って待ち続けた。売店はもう片付けていて買うものも無いし、コーヒーを飲んで待った。そのうちおばさん達が場内の清掃を始める始末。まあ、地方ならではのアバウトさなんだろうか。中央なら暴動もんである。

今日はやけに待たされる日だなと思いつつ家路に着く。儲かった師匠に競馬四季報優駿を買ってもらった。なかなかのどかでよかったのでまた機会があったら行きたいものである。